週刊「7つの週刊」日本元気化計画 元気には原則があった!
竹村富士徳の「7つの習慣」実践マガジン|リーダーシップや戦略実行、タイム・マネジメントの講師として活躍する竹村富士徳が、「7つの習慣」を実践するにはどうしたらいいのか、そのポイントを連載でお届けします。

第5回:刃を研ぐことはPC活動だ

竹村富士徳
フランクリン・コヴィー・ジャパン取締役副社長として経営に携わりながら、コンサルタントやファシリテーターとしても活躍。リーダーシップや戦略実行、タイム・マネジメントなど、幅広いジャンルで、コンテンツのコンセプト作りから開発まで深く関わる。雑誌などのメディアへの登場も多数。

●4つのニーズと4つの側面

 第7の習慣である「刃を研ぐ」は個人におけるPC活動です。『7つの習慣』で効果性とは「望む結果を得続けていくというのが効果性」という定義でした。「望む結果を得る」ということだけでしたら、第1〜第6の習慣である自己リーダーシップ、それから人間関係によるリーダーシップを発揮することで得ることができます。

 しかし、「得続けていく」ということであれば、私たち自身を養い、育てていかなければなりません。P/PCバランスを考える際、いわゆる金の卵というのは私たちの望む結果であり、金の卵を産むガチョウは私たち自身と考えることができます。「刃を研ぐ」というのは、私たち自身であるガチョウを養うために、「肉体、知性、精神、情緒」という4つの側面でどのように自分自身を養っていくのかを考えるのが、第7の習慣です。

 この4つの側面は、『7つの習慣』や『第8の習慣』の中においても、人の4つのパーツであったり、人の4つのニーズに結びついています。まず人間を、パーツという言い方が適切かどうか分かりませんが、そういう側面で捉えたときに、肉体的な側面と知性の側面はわかりやすいですね。第7の習慣では情緒の面は社会・情緒と言いますが、いわゆる人間関係のことを表しており、これも私たちの中にある大切な一つの側面です。

 よく「精神力」なんて言い方をしますが、私たちの中にある精神的な思いや望みは、『第8の習慣』では良心という言い方もしています。この4つのパートがあり、また人の中には意識する、しないに関わらず4つのニーズがあります。それは「生きること、愛すること、学ぶこと、貢献すること」です。こうした4つのニーズを体系立ててまとめたのが、この4つの側面ということになります。

●社会・情緒面を磨くには?

 コヴィー博士は、肉体、知性、精神を何か一つで区切って、情緒は別次元で捉えているところがあります。肉体、知性、精神の三つに関しては、まず自己リーダーシップを発揮して、個人的な活動のところでできるものです。肉体、知性は非常に分かりやすいと思いますが、精神に関しては「自分自身のミッション・ステートメントを書く」や「価値観を見出す」であったりとか、「自分自身の方向性について考える」や「目標を立てる」などです。「瞑想する」こともあります。先程、良心のお話をしましたが、これは自分自身と向かい合って、自分のその精神的な側面のところを見ていくことです。ここは、自己リーダーシップの中で捉えていくものです。

 もう一つの側面の情緒ですが、社会・情緒とありますので、今度は他の誰かがいなければ磨くことができません。ここは、家族との関係、友人と過ごす時間、誰か大切な人との時間を過ごすことを通して、人間関係を強めていくための活動となります。ここは、ソーシャル・エモーションという言い方をしていますので、最も高い充実感、満足感は人間関係において築かれるものだと考えています。

 例えば、仕事において私たちが一番辛い思いをする時は、たいてい人間関係で非常に苦しんだりとか、私たちの感情に負荷がかかったりする場合です。逆に、お客様や共に働く人など、周りの方々の喜びを通して、非常に大きな喜びを得ることもあります。この感情と人間関係は非常に大きな結びつきがあります。

 真の効果性を高めている方々の特徴として、やはり個人的な生活の中でも、周囲の方々と豊かな人間関係を築いています。そして、社会やビジネスの中にいても、チームのメンバー、上司、部下、お客さんとの関係で、非常に豊かな信頼関係を築いています。また、コヴィー博士は、豊かな人間関係を築くという点に、非常に価値と重きを置いています。人が本当の意味で効果性を高めてより豊かな人生を歩んでいくには、この人間関係をより強固なものとしていく、関係を強めていくということは、絶対に欠かすことのできません。

 人は肉体、知性、社会・情緒、精神という4つをバランスよく磨いていくことが必要です。『第7の習慣』の最後の方で、コヴィー博士は肉体、知性、精神に関して、これを毎日やり続けていくことが、毎日の私的成功だとお話されています。そして、私たちの相互依存状態を高めていくために、情緒の側面を、日々の私たちの活動の中で高めていくということこそが、公的成功を日々経験していることだとお話しされています。ですから、私たちがそれぞれの習慣をより高いレベルに高めていくには、この4つの側面をバランスよく、特にここは主には第Ⅱ領域の活動ですから、毎日意識的に主体的に取り組んでいくが必要になってきます。

●1日15分の第Ⅱ領域の活動を

 私たちは、第Ⅱ領域の活動を中心にとお勧めしていますが、実際には一日の大半の時間を第Ⅱ領域に使うというわけにはいきませんので、一人一人の中でどんなバランスが必要なのかを考えていただけたらいいと思います。ただ、最低限お勧めしたいことは、私自身もなかなか日々の生活では難しいのですが、一日の1%の時間は肉体、知性、それから精神を磨くことをお勧めします。具体的には、それぞれ一日最低15分費やすことです。

 そして、情緒的な面に関しても、毎日私たちは必ず家族、社会や組織の中にあって、いろいろな方々とつながっていく中で、小さな信頼の預け入れの活動を意識的に行うことであり、わずかな時間でも私たちはそれに取り組むことができるのではないかと思います。バランスはそれぞれの、その時々の状況あるかもしれませんが、大切なことは何らかの事柄を毎日少しの時間でも取っていくことが、習慣化するカギになると思います。

 継続していくことが一番難しい領域かと思いまが、やはり一日少しずつ、計画を立てて自分で誠実にやっていくしか方法はありません。特に第Ⅱ領域の活動は、自分自身で決意しても、実際の生活の中のせわしさとか忙しさにかまけてしまってなかなか難しいのが実際です。三日坊主なんて言葉があるとおりです。

 ただ一つだけ、それはコヴィー博士も非常に強調しており、また第3の習慣の中の原則と言われている「誠実さ」がポイントになります。誠実さというのは、英語ではIntegrityであり、Integrityとは言行一致、言っていることとやっていることが一致しているという意味です。言っていることとやっていることが一致して、自分自身に誠実な人というのは、自分に対する信頼の預け入れを継続することができます。

 なかなか継続するのが難しいということでも、自分に対する信頼の預け入れを継続できるのであれば、もっと私たちは人格的要素を磨いていくことができます。カギはやはり、やり続ける、自分自身に誠実であり続けるといことになります。それをやり続けるのであれば、必ず自分の中の人格的要素というものが養われていきます。それが私たちを、より後押しをしていってくれます。それこそが現実的なことではないかと感じています。

●フェイス・ツー・フェイスが大切

 今の若いビジネス・パーソンの方は意外に学び好きと言います。しかし、勉強することが大好きでも何に役立つのかわからないという方が多いようです。肉体面・知性面の「刃を研ぐ」という活動に関しては非常に興味があっても、精神面・情緒面の「刃を研ぐ」という面は少し足りないように思います。

 例えば社会・情緒面に関して、ソーシャルメディアでなどを通して人とのつながりは増えるような感じはしますが、量と質という面で考えると、量は増えても質のところがなかなか追いついていかない。質もいろいろなツールを使って築き上げることはできなくはないと思いますが、やはりフェイス・ツー・フェイスで意図的に意識的に信頼の預け入れが必要だと思います。

 あとは学ぶことは学ぶのですが、実際自分がどちらの方向に向かって、何を貢献していくというよりは、何か自分のために学んでいくことが多いように思います。いわゆる悪い言い方をすると、利他的というよりは利己的という気がしますね。現代はそうした流れがあるように思います。

 ですから、大切なことは、この第7の習慣は、第7だけで区切るのではなくて「第2の習慣 終わりを思い描くことら始める」との関連が鍵になると思います。特に今の精神面に関していいますと、感情面のところも全部入れ込むとすれば、第2の習慣は外せないと思うのです。どこに向かって進んでいくのか、それが利己的なものではなくていわゆる利他的なものなのか、そして自分自身の良心が促すもののために、自分自身の精神的な力を発揮することが求められます。だからこそ私たちは、社会・情緒の側面を強めていくとことが大切になります。そこの結びつきをしていくことができるのであれば、肉体や知性の「刃を研ぐ」マニアなんていうことではなく、全然違った感覚で捉えることができるのではないかと思います。(談)