週刊「7つの週刊」日本元気化計画 元気には原則があった!
竹村富士徳の「7つの習慣」実践マガジン|リーダーシップや戦略実行、タイム・マネジメントの講師として活躍する竹村富士徳が、「7つの習慣」を実践するにはどうしたらいいのか、そのポイントを連載でお届けします。

第2回:ダイナミックな時間管理のマトリックス

竹村富士徳
フランクリン・コヴィー・ジャパン取締役副社長として経営に携わりながら、コンサルタントやファシリテーターとしても活躍。リーダーシップや戦略実行、タイム・マネジメントなど、幅広いジャンルで、コンテンツのコンセプト作りから開発まで深く関わる。雑誌などのメディアへの登場も多数。

●第II領域の重要性

 前回は時間管理のマトリックスの第I領域〜第IV領域の特徴についてご紹介しました。「7つの習慣」を実践する上で最も大切な領域は、緊急ではないが重要な第II領域です。実は、タイム・マネジメントの鍵はここにあります。私たちが取り組まなければならないのは、「第II領域活動」だからです。
 これこそが効果的なタイム・マネジメントを集約した概念であり言葉であると言っても過言ではありません。この領域には、準備、予防、計画、人間関係づくり、真のレクレーション、価値観の明確化など、私たちいとってとても大切な事柄です。しかし、緊急ではありません。
ここで、前回の「追加の1時間何をするか」という質問を思い出してください。その追加の1時間で行いたいことは、第I領域の活動でしょうか、第III領域の活動でしょうか。それとも第II領域の活動でしょうか。
多くの方の答えは、この緊急ではないが重要なこと、この第II領域の事柄ではないでしょうか。つまり言い換えれば、私たちの中でありえない25時間目の活動こそが、この第II領域の事柄なのではないでしょうか。みなさまには、この第II領域を中心としたプランニングを行なうことをおすすめします。
私たちに「バランスと生産性」をもたらしてくれるのは第II領域の活動であり、この第II領域こそ、タイム・マネジメントしなければなりません。この第II領域を具現化するために、その他の領域をコントロールする必要があるのです。繰り返しになりますが効果的なタイム・マネジメントの鍵を握るのは、この「第II領域」なのです。
私たちの中に、重要と緊急、コンパスと時計という基軸がなくなった場合、どのようなことが起こるのでしょうか。時間管理のマトリックスの緊急と重要の基軸がなくなったと仮定しましょう。あるのは、1日、1週間、1ヵ月という枠だけです。この枠の中で、どのような優先順位の基軸を持って活動すればいいのでしょうか。
こうした状況の中で、優先的に出来上がってしまう、基準は2つです。一つは、締め切りのあるものからどんどん片付けていくということです。二つ目は、手の付けやすいものから手をつけるということです。締め切りのあるものからどんどん片付けていくということになってしまいます。

●1日15分を第II領域に振り向ける

私たちは忙しい毎日を送っています。決してさぼっているわけではありません。しかし、生産性を向上させたり、心の平穏を感じることができなかったりする大きな原因はどこにあるのかというと、多くの場合、第II領域の活動ができていないことにあります。
みなさんは、1日の始まりに、タスクリストを作成されると思います。そのタスクは、どの領域のタスクでしょうか。第Iでしょうか、第IIでしょうか、第IIIでしょうか。そしてそれらが終了したときにチェックを入れたり線を引いたりして充実感や喜びを感じます。
しかし、やり残したタスクを見たときに、多くの場合そこに残っているのは、第II領域のタスクではないでしょうか。第II領域のタスクは先送りされ、翌日には翌日の第I、第IIIのタスクが押し寄せてきて、また第II領域の活動は先送りされてしまいます。
I、第III、第IV領域、この3つの領域の共通項は、長い時間その領域にとどまってしまうと否定的な結果を招く、という点ですが、それ以上に重要な共通点は、この三つの領域の事柄は、私たちが意識してスケジューリングせずとも、取り組まなければならない、もしくは取り組んでしまう、または取り組まされる領域とも言える点です。
そのため、優先順位をつけスケジューリングする、しないに関わらず、主に第I領域を中心に着手をすることになるわけです。第IV領域はともかく、第I領域や第III領域に関しては、プランニングせずとも、スケジュールに落とし込まなくても、私たちはやらざるを得ない、またはやらされてしまいます。もし第I領域や第III領域を中心としたタスクリストを日々作成しているのであれば、それはプランニングというよりは、備忘録の作成といった方がいいでしょう。
私たちが計画し、意識的に取り組まなければならないのは、第II領域の活動なのです。第II領域こそ、私たちが書き、計画し、決意し、取り組まなければならない事柄なのです。時間管理を追い求めていくときに、最も大切なことはこの第II領域に秘められています。毎日の生活の中で、第II領域を中心とした活動を行うことで、私たちの生活は変わり、時間管理の効果性が確実に向上していきます。第II領域の活動には、それだけの力があります。
ここで一つ提案があります。1日の活動の1%の時間でかまいませんので、意識的に、この第II領域の活動に投資をしていただきたいのです。1日の1%の時間とは、約15分です。
さきほど、1日あと1時間あったら何をしますかという質問に対し、多くの方々が読書や勉強、運動やエクササイズ、家族との時間、趣味の時間などとお答えになったことでしょう。ぜひ意図的に、1日の1%の時間を、どんなに忙しくても、第II領域に費やしていただくことができれば、確実にみなさまの時間管理に関する効果性を高めていくことができるのではないでしょうか。

●第II領域を中心としたライフ・スタイル

 では、第II領域の事柄を確実に実行するにはどうしたいいのでしょうか。時間管理に関して、効果性の高い方々に共通していることは、第II領域を中心とした計画、時間の使い方、そしてそのようなライフ・スタイルになっていることです。
 私たちの使える時間は、時間管理のマトリックスの枠となる1日24時間から、1週間7日、1ヵ月約30日、1年365日が等しく与えられています。第II領域の事柄だけにすべての時間を費やすことは困難ですが、第II領域を中心としたパラダイムで生活することは現実的なアプローチです。
 前述したように、多くの人は(1)締め切りが近いものから手を付ける、(2)(少しでも時間が空いたら)手の付け易いものから取りかかってしまいます。(1)は第Iもしくは第III領域となり、(2)は主に第III、第IV領域となることから、第II領域に割く時間がもっとも小さいばかりか、第II領域に意識がほとんど向かない状態となります。
 その結果、忙しいばかりで、第II領域によって得られる生産性、バランス、心の安らぎをほとんど得ることができない、いわば空回りの状態になってしまいます。多くのタスクを実行しているにも関わらず、真の効果性を発揮するもっとも大切なタスクを実行できていないからです。
 職場でそんなアプローチばかりしていると、会社から帰宅したとき、あるいは休みの日には、第IV領域で時間を費やすことが多い傾向が見られます。また、プライベート面でも、仕事の延長で緊急なことに追い回されてしまい、第IV領域に逃げ込みたいという気持ちになってしまいます。つまり、こういったパターンが仕事だけでなく、ライフ・スタイルになってしまっているのです。

●ダイナミックな時間管理のマトリックス

 しかし、第II領域を中心としたライフ・スタイルは、これとは全く違ったアプローチです。第Iや第IIIは前述の通り、ゼロにすることは現実的ではないとしても、第II領域を中心としたアプローチをすることによって、効果性が目に見えて高くなってくるのです。それでは、そのようなアプローチに至るまでのプロセスをみていきましょう。


ダイナミックな時間管理のマトリックス

 1日24四時間の中に、どれだけの第II領域のタスクを実行しているのか、リーダーはもちろんですが、チームメンバーにっとても大きな課題です。第II領域以外のタスクをできるだけ少なくするよう、重要と重要でない部分を区切っているラインをできるだけ下げることは十分可能です。
 重要でないタスクを減らしていけばラインは下がります。そのためには、時間管理のマトリックスを①のような静止画としてではなく、②や③のように変化する動画としてイメージするとわかりやすいでしょう。
 まず、先週の一週間に取り組んだタスクを思い出して、時間管理のマトリックスにプロットしてみてください。第II領域に入る、人間関係づくり、人材育成、自己啓発、読書、セミナーへの参加、重要な会議やプレゼンテーションに備えた準備などはどのくらいあるでしょうか。多分、第III領域や第IV領域の重要でないタスクの方が多いのではないでしょうか。
 まず、重要でないラインを下げるために、第III領域や第IV領域のタスクを減らしてみましょう。多くの飛び込み仕事にはノーと言い、多くの無意味な電話やメール、暇つぶしなどをさっさと切り上げるだけで、多くの時間を確保できるはずです(②)。重要でないラインが下がったら、次に緊急なラインを左に移動します(③)。
 緊急なラインを左に移動するには、クレームや危機の原因を追及し、その対策を考えて取り組むしかありません。クレーム防止や危機への対応に対する分析、計画を第II領域のタスクとして設定し実行すればいいわけです。最初はクレーム対応や危機対応などと並行して作業しなければならないので大変ですが、その効果が出てくれば第I領域に取り組む時間は減り、第II領域に近づいていきます(③)。
 重要でないラインが下がり緊急なラインが左に移動すれば、第II領域に入るタスクが大きくなってきますが、ここで問題となるのはその中身です。第II領域には、会社の最重要目標だけでなく、個人の最も大切なことも入ってきますから、そのバランスが問題になります。会社の最重要目標と同様に、プライベートのもっとも大切なことも実行できるように、時間配分を考える必要があります。まさに究極の第II領域活動と言えるでしょう。(談)