週刊「7つの週刊」日本元気化計画 元気には原則があった!
竹村富士徳の「7つの習慣」実践マガジン|リーダーシップや戦略実行、タイム・マネジメントの講師として活躍する竹村富士徳が、「7つの習慣」を実践するにはどうしたらいいのか、そのポイントを連載でお届けします。

第1回:時間管理のマトリックス

竹村富士徳
フランクリン・コヴィー・ジャパン取締役副社長として経営に携わりながら、コンサルタントやファシリテーターとしても活躍。リーダーシップや戦略実行、タイム・マネジメントなど、幅広いジャンルで、コンテンツのコンセプト作りから開発まで深く関わる。雑誌などのメディアへの登場も多数。

●1日が25時間だったら?

時間管理のマトリックスは、「7つの習慣」の「第3の習慣 最優先事項を優先する」という、タイム・マネジメントに関わってくるものです。この時間管理のマトリックスをご紹介する前に、みなさんに考えていただきたいことがあります。それは、「1日が24時間ではなく、25時間あったとしたら、その追加の1時間で何をされたいですか?」ということです。
ただし、多くの方々が「寝る」ということをお考えになるかもしれませんが、「寝る」以外で考えてください。どんなことを追加の1時間でやりたいですか? このような質問をさせていただくと、いろいろなアイデアや考えが出てきます。
多くの人の答えを見ると、共通項があります。それは、「自分ではとても大切なことだと思っているのだが、なかなかそれを行う時間をとることができない」ということです。この追加の1時間でやりたいことを、ありえない24時間目以降ではなければできないということではなく、私たちの毎日の24時間の中で、どのようにしたら実現することができるのかを考えるということです。そしてそのためのヒントになるのが、この時間管理のマトリックスです。
では、この時間管理のマトリックスを理解するにあたって、基礎的な概念を一つ紹介しましょう。それはリーダーシップとマネジメントです。みなさんは、リーダーシップとマネジメントの違いは何かと聞かれた場合、どのようにお答えになるでしょうか。
これは管理職などの役割の違いということだけではなく、個人におけるセルフ・リーダーシップやセルフ・マネジメントとして考えていただいてもかまいません。原則はまったく同じです。
まずリーダーシップに含まれることをご紹介しましょう。正しいことを行う、重要性に基づいて方向性を指し示し、目的を持って始める、などです。マネジメントはこれと相対します。ものごとを正しく行う、重要性よりもスピード、効果性よりも能率を、目的よりも手段を重んじていきます。

●コンパスと時計

リーダーシップというものは、どちらの方向に向かって進むのかという方向性を指し示すことであり、マネジメントというのは、その方向性に向かって能率効率よく管理することになります。この2つの概念を2つのアイコンで紹介するとこうなります。

リーダーシップはコンパスを表し、マネジメントは時計を表していると考えてみてください。ここでご紹介したい原則というのは、コンパスがあった上での時計ということです。そうでなければ、どれだけすばらしい能率、マネジメント、時計があったとしても、まったく違う方向に早く着いてしまうことになってしまいます。
この二つのアイコンは決して並列でならぶものではありません。まずコンパスありきの上での時計でなければなりません。時間管理のマトリックスも、まずは重要軸が優先されるべきであり、緊急か否かに関わらず、重要なことを優先できるようにマネジメントする必要があるということです。
ピーター・ドラッカーはこのように言っています。「もともとやるべきでなかったことを、能率効率よくやることほど非効率なことはない」
私たちは、タイム・マネジメントのことを考えるときに、決まった時間の中に、できる限り多くのことを詰め込もうとします。つまり、時計のパラダイムでタイム・マネジメントを行うわけです。
しかし、私たちはどこへ向かうのかを先に決めて、その上で能率効率よくやることを考えなければ、私たちは時間管理の本来の目的である、生産性や効果性をつかむことはできません。このコンパスと時計を頭の中にいれながら、本題に入りましょう。

●「時間管理のマトリックス」

この時間管理のマトリックスというのは、緊急と重要度で分類したものですが、さきほどご紹介した、コンパスと時計とを重ね合わせたときに、どのような気づきがあるでしょうか。何が重要なのかを教えるのが、私たちのコンパス、リーダーシップです。何が緊急なのかを教えるのが、私たちの時計、マネジメントです。
原則は、コンパスがあっての時計でなければ意味がないということになるわけです。そのようなことを考えながら、この時間管理のマトリックスを眺めてみてください。

◎第Ⅰ領域
それぞれの領域には全く違った特徴があります。第Ⅰ領域は、せっぱ詰まった問題や差し迫ったプロジェクト、否応なしに今すぐに対応しなければならない重要な活動で、優先順位や長期的な結果を考えるまでもなく、即座に取り組まなければならないものが多く含まれます。この第Ⅰ領域の事柄については、私たちは適切に管理をしていかなければなりません。
 もしかしたら一日の大半をこの領域の中で過ごされている方も多いのかもしれません。そのような方は重要かつ緊急なことを行っているという思いから、一つひとつの事を処理していく際に、満足感はあることでしょう。しかし、あまりにこの領域で多くの時間を用いてしまうと、ストレスフルになり、燃え尽きてしまったり、あるときは病気になったり、人間関係が悪化してしまうこともあるかもしれません。
多くの事柄を対応しているのに、充足感や満足感を感じる代わりに、ストレスフルになってしまうというある意味不合理な矛盾を感じてしまう領域です。だからといってこの領域において時間をまったく過ごさないというわけにはいいきません。しかしながら、多くの時間を費やしてします。ましてや一日の大半をこの領域で過ごしてしまうと、短期的な結果はみられますが、長期にわたっての効果性とこの領域における時間の量は反比例してしまうようです。
◎第Ⅲ領域
続いて第Ⅲ領域の特徴をみてみましょう。この領域は緊急だが重要ではないものの領域です。ここには、不必要な報告書やミーティング、Eメールの片付け、そして他の人の些細な問題に対する対応、ほかの人たちにとっては重要ですが自分にとっては重要でないことに対する対応などの事柄です。この事柄は緊急なので、即在に反応しがちなのですが、完全にゼロにするわけにもいきません。
第Ⅰ領域も緊急の領域でしたが、こちらの領域は重要性に欠けるため、どれだけ実行しても、自分自身の存在意義や価値を感じることが難しい領域です。私たちは時折、緊急緊急と追い立てられてしまうと、なぜか緊急=重要という錯覚をしてしまいます。私たちはこの領域のことを錯覚の領域と呼び、この領域の活動を最小限にするようにおすすめをしています。
◎第Ⅳ領域
続いて第Ⅳ領域を見てみましょう。ここには、時間の無駄遣いや○○し過ぎ、といったようなことが入ってきます。浪費、過剰の領域とも呼んでいます。
ここで時間を用いることは最も避けたい領域です。特にタイム・マネジメントの観点からは、最初に削らなければならない領域です。しかし、この領域には2点落とし穴があるため、この領域は避けた方がいいと理解しながらも、なかなかゼロにするのも難しいのも事実です。
第一の理由は、特に第Ⅰ領域が多い方は当てはまる傾向が強いのですが、他の領域のストレスが多いとそこからの脱出エリアとして、ここに逃げ込んでしまう傾向があります。たとえば、平日の日中は第Ⅰ領域で目一杯過ごしておいて、夜家に帰るとずるずると第Ⅳ領域で時間を過ごしてしまう。もしくは平日は第1領域で頑張り、週末になると第Ⅳ領域に逃げ込むというパターンも同様です。
このように述べるとストレスから解放されて、リラックスすることが悪のように響くかもしれません。そこがふたつ目の落とし穴のポイントになります。疲れやストレスから解放するために、リラックスすることそのものは第Ⅱ領域の活動です。しかし、それが過剰となり“~し過ぎ”ということになると、その第Ⅱ領域活動が第Ⅳ領域になってしまう可能性があるのです。
この領域の活動は、辞める、止めることによって、できる限りこの領域での活動をなくすことをおすすめしています。(談)