週刊「7つの週刊」日本元気化計画 元気には原則があった!
発想のワクをはずして挑戦しよう!|ドリームインキュベータ会長
堀 紘一氏

「個人がワクをはめずに自分の頭で考え、国や企業もワクをはずして挑戦すれば、元気になることができる」と堀紘一氏は話します。

堀 紘一(ほり・こういち)

経営コンサルタントの第一人者。19年に亘る会社戦略事業戦略の立案、並びに企業風土の改革や活性化に関わるコンサルティングの豊富な経験を生かし、2000年に「もう一回人生にチャレンジを」と、株式会社ドリームインキュベータを設立。ベンチャー企業の育成および大企業の戦略策定・実行支援のコンサルティングを行っている。『「もう一度会いたい」と思われる人になれ!』『正しい失敗の法則』(PHP研究所)、『一流の人は空気を読まない』(角川書店)など著書多数。

●アナロジーがビジネスを成功に導く

 ビジネスの成功には、ノーベル賞を取るほどのクリエイティビティは不要ですが、人と同じことやっていてはだめで、ナンバー1かオンリー1でないと成功しません。ビジネスの成功には、クリエイティビティが不可欠なのです。
 そのためにはどうしたらいいのか、言葉で言うと創意工夫、クリエイティビティを発揮しなくてはなりません。そうすると、クリエイティビティなんか持ってないと反論される方いるんですね。
 しかし、生まれつきクリエイティビティを持っている人は、何百万人に1人くらいしかいませんので、それほど悲観することはありません。ではどうやってクリエイティビティを発揮したらいいのか。その答えは簡単で、アナロジーと順列組み合わせの二つを考えればいいのです。
 例えば、製造業のカンバン方式(JIT)を小売業に取り入れたから、コンビニが伸びました。おにぎりを2日に1回作っても美味しくありませんが、作ったばかりのおにぎりがJITで1日に数回も届けばおいしく食べられます。
 つまり、あるやり方を別の世界で展開してみることが、アナロジー(類推)なのです。誰も決めたわけではありませんが、違う業界の方法論であっても、「自分のところに適用したらうまくいくかも知れない」と考えられるかどうかがポイントです。これでビジネスは成功する。

●順列組み合わせを変えてみよう

 もう一つは、順列組み合わせを変えることです。ちょっと言葉は難しいですけど、モノを造る時には順番があり、その順番を変えることです。順列組み合わせを変えて成功した例で、一番わかりやすいのはアパレルです。
 アパレルは売れ残りが付きものです。デザインやカットの売れ残りもありますが、色ほどではありません。イタリアのアパレルメーカーが売れ残りの研究をした結果、面白いことに売れ残るのは色だということがわかったのです。
 色の売れ残りが怖いので、半年前にファッションショーを開催して色の流行をつくり出すわけです。消費者に暗示をかけて、消費者が春になるとその色を買うように仕向けるわけです。しかし、売れると思った色が売れないで、売れないと思った色が売れてしまうことは日常茶飯事です。
 ある色が売れ残ってしまうのは、服の製造プロセスに原因があります。服の製造は簡単に言えば、紡績→染色→織り→裁断→縫製という5つのプロセスであり、問題なのは染色が2番目にあることです。流行する色を予想して染色し縫製するのですが、それが外れると売れ残ってしまう。
 そこで、そのアパレルメーカーは業界の常識を破って、染色を最後の工程に変更したわけです。最初、それを提案した人に対して「何も知らないからだ」とほとんどの人から否定されたのですが、「その意見は傾聴に値する」と採用され、染色を最終工程にする方法を研究開発したのです。
 その結果、染色を最終工程にすることができ、色の売れ残りが激減しました。世界中の店舗で売れた色の情報が毎日POSでわかるので、縫製した服を最終工程で染色すればいいからです。順列組み合わせを変えたことが、イタリアのアパレルメーカーを高収益企業に変えました。

●半歩前に出るのがちょうどいい

 ノーベル賞はアナロジーや順列組み合わせの変更では取れないと思いますが、ビジネスではそれが十分な創意工夫になるわけです。これはビジネスだけではなくて、個人の生き方にも当てはまります。
 ユニークになろうと思っても、なれない人もいます。しかし、一味違えばいいのです。二味、三味も違うと、かえって周りからに受け入れてもらえません。でも本当は、一味ではなく、半歩前に出るくらいがちょうどいいのかもしれません。
 一歩前に出ると、「あいつは何やってるんだ」というような話なってくるからです。かえって受けない。半歩であれば、皆と同じと言えば同じだし、違うと言えば違うぐらいの微妙な距離感、これがビジネスでは一番受けるんです。

●発想のワクをはずして元気になる

 今の学校教育は発想にワクをはめてしまうので、若い人の発想のワクは固定化しがちです。例えば、就活では皆黒いスーツを着てマニュアル通りそつなく受け答えするという具合で、今まではそういう人を採用した企業が多かったのも確かです。
 それが今はちょっと変わってきて、成績が悪くても一芸に秀でた者を採用するような会社も出てきました。今まではグループ面接で1人10分ぐらいしか使わなかったのが、1人1時間位は面接しようということも行われるようになってきました。
 多くのビジネスパーソンは受験競争を勝ち抜いてきたので、答えを探すのは得意かもしれませんが、問題は答えを探すことではありません。ビジネスの世界では、答えは用意されていないからです。
 何が問題かが問題なのです。しかし、大半の人は問題なんてわかり切っていると思っているのですが、それはまったく違います。発想のワクを外さないと問題を発見することができず、解決策を見出すことはできません。元気になるために一番大事なことの一つは、発想のワクを取り除くことです。
 これはどんな企業でも同じです。戦後の日本企業が成長したのは、失敗を沢山しかたらです。失敗は成功のもとなのです。個人がワクをはめずに自分の頭で考え、国や企業もワクを外して挑戦すれば、元気になることができるのです。(談)

●インタビュー


西川りゅうじん氏 商業開発研究所レゾン所長