第3の案
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32第3の案よかった。偉大な作曲家とその時代を知り、それらの作曲家の曲を演奏すれば、歴史をいきいきと学べた。他の国のフォークソングを歌いながら、外国語をかじることもできた。音楽家の親と教師のシナジーは、音楽と基礎科目のシナジーを生み、生徒は音楽と基礎科目の両方を学ぶことができた。すぐに他の教師や親も挑戦した。そのうちに政府まで、この第3の案に関心を持ったのである。TQC(総合的品質管理)経営学教授のW・エドワーズ・デミングが製品の質を上げる必要性を説いた一九四〇年代当時、米国企業の幹部は、研究開発費を削り、短期的な利益を確保することに会社の命運を賭けていた。これは二者択一の考え方である。高品質をとるか、低コストをとるかであって、両方はとらない。だれもがそれを当然と思っていた。こうして米国は、目先の利益を追求し品質を落とす悪循環に陥った。顧客から苦情の出ないぎりぎりのところまで製品の質を落とし、うまく切り抜けよう、というマインドセットが定着したのである。米国で受け入れられなかったデミングは、日本に目を向けた。欠陥は製造工程に知らず知らずのうちに入り込み、やがて顧客離れにつながるから、製造部門は欠陥率を継続的に下げていかなければならない、というのがデミングの持論の要点である。日本企業は、デミングの考え方に彼ら独自の「カンバン方式」(製造管理を労働者の手にゆだねる手法)を組み合わせた。カンバンは「市場」を意味し、工場の労働者が食料品店の買い物客のように部品を選ぶのである。したがって部品メーカーには、より良い部品を生産するプ
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