時間管理のマトリックスは、「7つの習慣」の「第3の習慣 最優先事項を優先する」という、タイム・マネジメントに関わってくるものです。この時間管理のマトリックスをご紹介する前に、みなさんに考えていただきたいことがあります。それは、「1日が24時間ではなく、25時間あったとしたら、その追加の1時間で何をされたいですか?」ということです。
ただし、多くの方々が「寝る」ということをお考えになるかもしれませんが、「寝る」以外で考えてください。どんなことを追加の1時間でやりたいですか? このような質問をさせていただくと、いろいろなアイデアや考えが出てきます。
多くの人の答えを見ると、共通項があります。それは、「自分ではとても大切なことだと思っているのだが、なかなかそれを行う時間をとることができない」ということです。この追加の1時間でやりたいことを、ありえない24時間目以降ではなければできないということではなく、私たちの毎日の24時間の中で、どのようにしたら実現することができるのかを考えるということです。そしてそのためのヒントになるのが、この時間管理のマトリックスです。
では、この時間管理のマトリックスを理解するにあたって、基礎的な概念を一つ紹介しましょう。それはリーダーシップとマネジメントです。みなさんは、リーダーシップとマネジメントの違いは何かと聞かれた場合、どのようにお答えになるでしょうか。
これは管理職などの役割の違いということだけではなく、個人におけるセルフ・リーダーシップやセルフ・マネジメントとして考えていただいてもかまいません。原則はまったく同じです。
まずリーダーシップに含まれることをご紹介しましょう。正しいことを行う、重要性に基づいて方向性を指し示し、目的を持って始める、などです。マネジメントはこれと相対します。ものごとを正しく行う、重要性よりもスピード、効果性よりも能率を、目的よりも手段を重んじていきます。
リーダーシップというものは、どちらの方向に向かって進むのかという方向性を指し示すことであり、マネジメントというのは、その方向性に向かって能率効率よく管理することになります。この2つの概念を2つのアイコンで紹介するとこうなります。
リーダーシップはコンパスを表し、マネジメントは時計を表していると考えてみてください。ここでご紹介したい原則というのは、コンパスがあった上での時計ということです。そうでなければ、どれだけすばらしい能率、マネジメント、時計があったとしても、まったく違う方向に早く着いてしまうことになってしまいます。
この二つのアイコンは決して並列でならぶものではありません。まずコンパスありきの上での時計でなければなりません。時間管理のマトリックスも、まずは重要軸が優先されるべきであり、緊急か否かに関わらず、重要なことを優先できるようにマネジメントする必要があるということです。
ピーター・ドラッカーはこのように言っています。「もともとやるべきでなかったことを、能率効率よくやることほど非効率なことはない」
私たちは、タイム・マネジメントのことを考えるときに、決まった時間の中に、できる限り多くのことを詰め込もうとします。つまり、時計のパラダイムでタイム・マネジメントを行うわけです。
しかし、私たちはどこへ向かうのかを先に決めて、その上で能率効率よくやることを考えなければ、私たちは時間管理の本来の目的である、生産性や効果性をつかむことはできません。このコンパスと時計を頭の中にいれながら、本題に入りましょう。
この時間管理のマトリックスというのは、緊急と重要度で分類したものですが、さきほどご紹介した、コンパスと時計とを重ね合わせたときに、どのような気づきがあるでしょうか。何が重要なのかを教えるのが、私たちのコンパス、リーダーシップです。何が緊急なのかを教えるのが、私たちの時計、マネジメントです。
原則は、コンパスがあっての時計でなければ意味がないということになるわけです。そのようなことを考えながら、この時間管理のマトリックスを眺めてみてください。