氏名

加藤雅子

住所

東京都八王子市

部門

「あなただけの習慣」部門

長年病に苦しみ、社会と断絶した10年を送っていたわたしが『7つの習慣』と出会ったのは2年前のことでした。その当時はこの後の人生を立て直そうと必死で毎日ノートに書き込み続けていました。そんな中で生まれた、わたしだけの習慣があります。

わたしは毎晩、翌朝の起床時間、主人の出勤を見送るまでの用事、片付けておくべき家事などを大学ノートの左ページにタイムテーブルのように書きだして、終わった項目に赤線を引いてOKと書いていくという方法でToDo管理をしています。

その中に、毎朝必ず「外郎売り」という二代目市川團十郎が勤めた歌舞伎十八番の口上を読む時間を設けています。

「外郎売り」は滑舌の練習として有名ですので、スーパーで買い物をする、電車に一人で乗る、挨拶をする、などの『社会性を取り戻すリハビリ』の一環といった感覚で始めました。これは手がふさがっている時にもできることなので、洗濯物を干す間やアイロン掛けをしている間、抑揚や速さを変えて何度も繰り返しています。主人と険悪な雰囲気になったり、自分の機嫌が悪いと気づいた時、また、なにか行動を起こす際に「めんどうだ」という気持ちが起きたときにも、外郎売りの口上をやります。

特に自分の機嫌が悪い時、言わないほうが良いようなことを言ってしまいそうな状況でのとっさの『一時停止ボタン』としての効果は抜群です。

最初はふてくされていても「拙者、親方と申すは、お立会いのうちに……」と、やっているうちに楽しい気分になってきて、主体性を取り戻す思考に修正するまでの時間を稼ぐことができます。

家にいることの多いわたしにとっては、アイロン掛けしながら口上を読むのは最良の習慣となりました。

最近は、自分の発声や滑舌、話をする時の間のとり方が上手になってきたように思います。また、沈黙するべき時に自分を抑制する力、相手の目を見て集中して聞きとろうとする姿勢、そのような部分を鍛えることにもつながりました。

さらに嬉しいおまけとして、過去の証明写真と今とを比べると、頬の垂れ下がった肉が引き締まり、ほうれい線が薄くなり、皆から若返ったと言われるようになりました。

女性にとって、容姿というのは非常に大切な要素です。わたしは38歳ですが、3年ほど前から顔の老け感、たるみを残念に思いながらも、ある程度は仕方がないと諦めていました。でも、今の自分の顔を見て諦めるどころか、習慣次第でどんな自分にでも変わることができるのだという確信を持ちました。

この数年間で外見のみならず、言葉遣い、振る舞い、表情、対人関係……何もかもが、想像もしなかったような気軽さと思いがけないスピードで、自分の憧れや理想に近づいています。

2010年の夏には、幸運にも仕事を得て、自分の稼いだお金で自分の物を買ったり、人生が一変してしまうような芸術家との出会いがありました。「外郎売り」の習慣は、一見なんの関係もないように思えましたが、今思うと現在の自分に到達するまでの鍵となる訓練となっていたのでした。

たったの2年でこれだけの変化をもたらしてくれた『7つの習慣』ですが、まだほんの一部を実践しただけです。これからも、手の届きやすいところに常に置いておき、更に学び続けていきたいと思っています。