第3の案
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31第2章 ◆ 第3の案:シナジーの原則、パラダイム、プロセス音楽の授業ある女性(ここでは仮にナディアとしよう)が、学校の前で娘を待っていた。八歳の娘カラは、バイオリンケースを持って泣きながら門を出てきた。「もう音楽の授業はなくなるって先生が言うの」と泣きじゃくりながら母親に話す。バイオリニストでもあるナディアはその晩、だんだん腹が立ってきた。がっかりした娘の顔を思い浮かべると眠れなくなり、その教師にぶつける非難の言葉を練りに練った。しかし翌日の朝、ナディアは考え直し、教師を攻撃する前に学校で何が起こっているのか確かめることにした。そこで早々と学校に行き、授業が始まる前に教師に会ったのである。「娘はバイオリンが好きなんです。子どもたちが学校で楽器の練習ができなくなるということですが、いったいどういうことなのでしょうか」と切り出すと、驚いたことに教師は泣き出した。「国語や算数など基礎学力の授業に全部の時間をとられ、音楽の授業ができなくなってしまって」と教師は話す。それは政府の命令だったのだ。ナディアは攻撃の矛先を政府に向けようした。しかしそうはせず、「子どもたちが音楽も基礎学力も身につけられる方法があるはずです」と言った。教師はしばし考えてから「もちろん、音楽には数学的な面もありますが」と言った。その時、ナディアはひらめいた。音楽で基礎学力を学ぶというのはどうだろう。ナディアが教師をじっと見つめると、二人は笑い出した。二人とも同じことを考えたからである。それからの一時間、まるで魔法のようにアイデアが湧いてきた。ナディアは間もなく、都合のつく時間は娘の学校でボランティア活動をするようになった。教師といっしょに音楽を通してさまざまな教科を教えたのである。生徒は、数字だけでなく音符も使って分数を学んだ(「八分の二音符は四分の一音符に等しい」というように)。詩の授業はもっと簡単で、子どもたちは詩を歌えば

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